粒子径とは?
粒子径とは、粉体や液滴などの粒子の大きさを表す指標です。薬学においては、医薬品の吸収、溶解、安定性などに大きく影響するため、非常に重要なパラメータとなります。
粒子径が薬学に与える影響
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吸収
- 粒子径が小さいほど、表面積が大きくなり、溶解速度が向上します。
- 溶解速度が向上することで、薬物の吸収率が高まる場合があります。
- ナノ粒子などの微粒子は、細胞内への取り込みが促進されるため、ドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用も期待されています。
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溶解
- 粒子径が小さいほど、溶解速度が速くなります。
- 難溶性薬物の場合、粒子径を小さくすることで溶解性を改善できます。
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安定性
- 粒子径が小さいほど、凝集や沈殿が起こりやすくなる場合があります。
- 懸濁剤や乳剤などの製剤では、適切な粒子径の制御が安定性確保のために重要です。
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製剤設計
- 吸入製剤の場合、粒子径が適切でないと肺の奥深くまで薬物が到達しません。
- 注射剤の場合、粒子径が大きいと血管を塞いでしまう可能性があります。
- このように、製剤設計において粒子径は重要な考慮事項となります。
粒子径の測定方法
粒子径の測定方法は、測定対象や粒子径の範囲によって様々ですが、代表的なものとして以下の方法が挙げられます。
- レーザー回折法:レーザー光を粒子に照射し、回折パターンから粒子径を算出します。
- 動的光散乱法:粒子による光の散乱を利用し、粒子のブラウン運動から粒子径を算出します。
- 電子顕微鏡法:電子顕微鏡で粒子を観察し、画像解析によって粒子径を測定します。
- ふるい分け法:様々な網目のふるいを使い分ける事で粒子の大きさを測定します。
粒子径に関する研究の進展
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近年では、ナノテクノロジーの進展に伴い、ナノ粒子を用いたDDSの研究が盛んに行われています。ナノ粒子は、従来の医薬品では治療が困難であった疾患に対する新たな治療法を提供する可能性を秘めています。
まとめ
粒子径は、薬学において非常に重要な概念であり、医薬品の吸収、溶解、安定性などに大きく影響します。粒子径を適切に制御することで、より効果的で安全な医薬品の開発に繋がります。
参考資料
- 日本薬学会:
https://www.pharm.or.jp/ - 島津製作所、粒子径測定における体積平均径[MV]とはどのような粒子径か?:
https://www.microtrac.com/jp/applications/knowledge-base/volume-average-particle-size/ - 粉体工学用語辞典:
https://www.sptj.jp/powderpedia/words/12473/ - L-columnシリーズについて:充填剤粒子径の特徴と選択:
https://www.cerij.or.jp/service/09_chromatography/L-column_03.html
この記事が、薬学生の皆さんの学習に役立つことを願っています。
問題
問1 医薬品の粒子径に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 粒子径が小さいほど、溶解速度は遅くなる。
- 粒子径が大きいほど、表面積は大きくなる。
- ナノ粒子は、細胞内への取り込みが促進される場合がある。
- 吸入製剤において、粒子径が大きすぎると肺の深部への到達が阻害される。
- 懸濁剤において、粒子径が小さいほど沈降速度が速くなる。
問2 粒子径の測定法に関する記述のうち、正しいのはどれか。
- レーザー回折法は、粒子のブラウン運動を利用して粒子径を測定する。
- 動的光散乱法は、電子顕微鏡を用いて粒子を観察し、画像解析によって粒子径を測定する。
- 電子顕微鏡法は、レーザー光を粒子に照射し、回折パターンから粒子径を算出する。
- ふるい分け法は、様々な網目のふるいを使い分ける事で粒子の大きさを測定する。
- ストークス法は、レーザー光を粒子に照射し、回折パターンから粒子径を算出する。
解答と解説
問1
- 正解:3、4
- 解説:
- 粒子径が小さいほど、表面積が増加し、溶解速度は速くなります。
- 粒子径が小さいほど、表面積は大きくなります。
- ナノ粒子は、細胞内への取り込みが促進されるため、DDSへの応用が期待されています。
- 吸入製剤では、適切な粒子径の制御が肺への薬物送達において重要です。大きすぎると、肺の奥深くまで到達できません。
- 懸濁剤では、粒子径が小さいほど沈降速度は遅くなります。(ストークスの式)
問2